鴉月花憐 黒い風切り羽を白い背に隠して 解れかかる糸の赤きことを知ったあの夜 硝子戸透覗く月、浮かぶ艶姿に 花弁一つ彩なす恋路の行方には  月夜花霞 燃ゆる熱情の渦にまかれ堕ちゆけば夢物語 この夜の底で見た風景切り抜いてみせて 逆さまに映るその心情を 甘い夜露に濡れてくこの体引き寄せて 深い闇に抱かれた もう月は隠れ草木眠る頃に 乱れ髪梳かす細い手首、貴方が引いたから 夜を重ねても響かぬ想い、胸に一つ 春終われど散らせやしない この眠れぬ唇そっと溜息を塞ぐ 罪の香は甘い花の様 その一花心にいっそ泣き濡れたままで 一夜の夢に溺れて 遠ざかる心 高い下駄の音を響き鳴らし 追うよりも羽を広げて この夜に乱れ咲いた花、貴方が散らして 独りより寂し、恋 憐 その愛しい背中にそっと爪痕残した せめて傷癒えるまで忘れないで 東の果て夜の風景疾風に巻かして 淡き夢醒めて風乙女 甘い思い出を一つこの心に仕舞った 眠らぬ夜の中で 深い闇に抱かれて